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2013.01.18 


日本にも世界にも無かった唯一無二のビジネスモデル エムスリービジネスモデル研究

 

こんにちは、黒須敏行です。2013年もアルコブログをよろしくお願いしますm(_ _)m

先日日経新聞社が、売上500億円以下の企業を対象に資本効率の高さや成長性などから企業の競争力を測った「NEXT50上場中堅企業ランキング」を発表しました。1位はクックパッド2位にカカクコムとこのブログで紹介してきた企業がランクインしています。

7位にエムスリーという会社がランクインしていましたが、この会社を御存知でしょうか?この会社もリブセンス、クックパッドのように高い営業利益率を誇る優良企業です。2000年に設立された会社ですがわずか4年で上場をしています。

エムスリーの特徴は当時日本にも世界にも無かったビジネスモデルです。彼らは自分達のビジネスモデルを特許申請をしており認可を受けていますが、インターネットを使ったビジネスモデルに特許が認められたのは日本ではエムスリーが初の事例です。

今回はその日本発唯一無二のビジネスモデルを紹介しますが、章立てとしては
・エムスリーの事業ミッション
・収益の推進力「MR君」
・エムスリーの強み
の3本立てで進めて参ります。これを読んでもらうことで、成長するビジネスに必要なことは何なのかを理解してもらうことがゴールです。それではひとつずつ見て行きましょう!

■エムスリーの事業ミッション

エムスリーの事業ミッションはインターネットを使った医療コストのカットです。医療コストのなかでも、製薬会社のマーケティングコストを最適化するという価値を主に提供することでこれまで成長してきました。製薬会社にはMRという職種があります。Medical Representivesの略で医療メーカーで医師や病院向けに営業を行う人達のことです。

製薬会社の主なBtoBマーケティング戦略はMRを増やし、医師との接触頻度を増やし、利益率の高い薬を購入してもらうことで売上を増やすというのが一般です。

ただし問題になるのが医師達への営業コストです。私の友人が医師をやっていますが、彼にヒアリングしたところ大学時代にMRから数千円もするお弁当を提供してもらっていたと話していました。

彼らはMRからこういった営業を受けているという現実があり、このような営業コストは製薬会社の新規開拓の手段でもあり収益を圧迫する悩みのタネにもなっています。この弁当話を聞いても他にどういった営業をかけているのか、その金額が相当なものになりそうなのは想像ができるでしょう。そもそもですが医師と数分間の面談をするにも、何時間も病院で待つということもザラです。

MRの営業コストの高騰は業界全体の課題であり、先日医師への接待に対しての金額について業界のルールを作ったことが話題になりました。このニュースでわかるのは業界全体がMRの営業コストを削減していく方向にあるということです。

エムスリーを立ち上げた谷村格さんは元々マッキンゼーというコンサルティングファームに在籍しており、ソニー小会社のソネットエンタテイメントに医療サービス立ち上げをアドバイスしていたところ、共同出資で自らが経営をとることになりました。

これまで谷村さんはコンサルティングに入った製薬会社の経営改善においてMR主体の営業からウェブを使ったマーケティング改善を提案してきました。これはMRに関するコストカットが大きな課題であると感じていためです。

エムスリーの事業価値は、IR資料にあるこのスライドが最もわかりやすいと思います。医師が情報を収集する時間と、製薬会社の営業コストには大きなギャップがありこれを改善しているのがエムスリーです。

引用:エムスリー2012年説明会資料

日本に25~30万いるといわれる医師の20万人を会員に抱えている基盤がエムスリーを評価する声として挙げられることが多いです。たしかにそれもそれで凄まじいことですが、エムスリーの最大の事業価値は、製薬会社のマーケティングコストの最適化です。

戦略コンサルタントが業界の課題や不満を事業化するという話は他にもあります。ラクスルという日本でナンバーワンのシェアを誇る印刷通販ポータルサイトがあります。この記事に事業の立ち上げ経緯が書かれていますが、ラクスルの代表である松本さんも元々ATカーニーというコストカットに強いコンサルティング会社に在籍していました。

様々な企業のコストカットを行ったところ最もインパクトがあったのが印刷費でした。印刷は仕様が複雑なことが多く、発注した印刷会社がまた別の会社に発注することが重なりやすく、費用が割高になるケースが多いためです。

そのためインターネットで発注者と供給者が直接結びつくことで印刷費用を最適なものに改善できるのではないかという仮説があり事業化したのです。ラクスルは先日1億2千万円の資金調達に成功したというニュースがあったとおり、投資家のお眼鏡に適う注目サービスです。

エムスリーやラクスルの話でわかるのは、ビジネスの基本は不満や不服といった「不」のつく問題を解消することです。これは元リクルートの伝説の編集者であるくらたまなぶさんが唱えている考え方ですが、今後も変わらないものでしょう。

 

■収益の推進力

エムスリーの収益ドライバーは「MR君」というウェブサービスです。エムスリーの年間売上は140~170億ですが「MR君」70億~80億と半数を占めています。

サイトでは顔写真入のMR君が提供する情報を見て、医師は気に入った営業マンを登録し、ネットを通じて医師とMR君は直接やりとりすることができます。

製薬メーカーは医師に対して自社の情報を伝えたい情報をMR君に掲載費を支払うことで、医師に対して直接情報発信をすることができるというモデルです。

MR君を理解するうえで抑えておくべきポイントは
①費用対効果
②圧倒的な高単価
③問題の発見
の3つです。

①費用対効果

MR君の売りはコストパフォーマンスの良さです。プロフェッショナルの鍛え方という本にエムスリーの谷村さんのインタビューが紹介されていますが、そこから抜粋しましょう。製薬メーカーはMRを雇うのに年間で大体2000万円のコストをかけています。

MRは1年間に医師に会う回数は平均2000回であり、1回の訪問に平均1万円かかっています。MR君では医師に対してメール送信し見てもらうのにが平均285円かかります。

またメーカーからのメッセージを医師が頭の中に残す確率は対面が50%、インターネットは87%という違いがあるそうです。MRを使って医師の1回の認識を得る費用は20,000円かかりますが、MR君であれば380円で済むことができます。このコストパフォーマンスが最大の価値です。

②圧倒的な高単価

MR君のサービス価格は基本料金が7000万、年間20万~40万通の医師へのメールを送る費用が2000万~4000万と最低でも年間1億近くの費用がかかります。そういった高単価にも関わらず20社以上の製薬会社が導入をしています。

サービスの価格は「顧客がサービスに対して感じる価値」×「サービスによってもたらされるメリット」によって決まると藤原和博さんは話していますがMR君は前述した通り、非常にコストパフォーマンスが高く見えるサービスです。

また同等のビジネスモデルを展開している事業会社がいないこともあり、サービスに対して感じる価値が落ちにくくなっています。IR資料によると1社あたりの平均単価2.4億を今後8~10億規模まで成長させ、導入製薬会社を現状の倍にできる潜在市場があると書かれています。ただし導入製薬会社の数については5年以上変化がありません。これについては別の課題があると感じています。

③医師とMRの間に横たわる問題を発見した

日本には25~30万人の医師がいるといわれており、そのうち20万人の医師がMR君に登録をしています。ただし当初は試行錯誤の時期でした。MR君の当初のセールスポイントは、日にち何時間待ってもなかなか会えない医師とネットでコミュニケーションがとれるというものでした。これはMRの営業効率の改善、コスト削減というものを価値と考えていたためです。

そのため当初は営業一人あたりに、MR君のアカウントを30万で販売するというビジネスモデルでした。ただしMR君を製薬会社に説明をしても「メールと何が異なるのか?」というリアクションが多かったということです。

そのためアカウントをMR一人毎ではなく、製薬会社の発行に切り替え「本社MR」というコンセプトを採り入れたことで導入が進むようになりました。

これはこれまでのMR担当者と医師の間に横たわっていた情報伝達の非効率性という問題を発見し、ウェブポータルという手段で最適化したことがMR君の成長を加速させる大きな要因になったのです。

■まとめ

エムスリーが儲かっているのは
・価値のあるビジネスモデルの構築
・人がやらないことをやる文化
・成果を積み上げる姿勢
に尽きると思います。

上述したようなインパクトを製薬会社に対して与えられるのはエムスリー以外ありません。そして継続的に成果改善をする企業姿勢もポイントです。取締役の横井智さんのコメントを紹介しましょう。

「会員化成功のための3つの秘訣」のようなものがあれば面白いのでしょうが、実は打ち手といっても魔法の杖などはなく、医師間の口コミや広告、SEOなど一つ一つ試行錯誤を繰り返すことで、地道に会員を増やしてきています。もちろん、失敗もありました。たとえば、昔、医療従事者向けの専門紙にお金を掛けて広告を出してみましたが、全く会員増につながらない…。~中略~このような「1+1を2にする」ような地道な取り組みが、今とこれからの事業を支えている、ここが「実業」の奥深い点の1つだと思います。

次回以降はそんなエムスリーのウェブマーケティングについて紹介をします。

またこの場所でお会いしましょう!

 

(参考文献及び参考サイト)
・エムスリーホームページhttp://corporate.m3.com/
・プロコミットhttp://www.procommit.co.jp/interview/m3/000060.shtml
・エムスリー躍進する業界特化型ポータル事業http://www.waseda.jp/prj-riim/paper/RIIM-CaseNo16_SonetM3.pdf
・高橋俊介・内田和成編集 「プロフェッショナルの鍛え方」(GOMA BOOKS、2007年)

 

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お電話でのご相談窓口はこちら 03-5428-3177

この記事の著者

黒須敏行

コンサルタント

女性向けポータルサービスのPVを30万から150万へ改善、リサイクル会社の新規事業の年商を新たに2億創出、賃貸オフィス仲介会社の反響数3倍改善などの実績があります。検索流入数とコンバージョン率の改善が得意です。

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