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2012.10.01 黒須敏行
価格.com研究 参入障壁の作り方編 |食べログ・ぐるなび比較|
こんにちは、黒須敏行です。
今回はウェブサービスの参入障壁の作り方についての話をします。ネットのビジネスの長所としては、誰もが参加できアイデア次第で大きな成功を手にすることができる可能性がありますが 、一方で競合に同じビジネスモデルを真似をされやすいとい欠点もあります。
皆さんはロケットインターネットという会社はご存知でしょうか。
ベルリンに本社があり、自身をベンチャービルダーと名乗っている会社です。ビジネスモデルはシリコンバレー発のイケてるビジネスを真似たモデルを、アジアとヨーロッパで展開をさせることです。これまで40カ国以上で100を超えるサービスを立ち上げてますが、そのままやんけと批判もされています。ザッポスを模倣したサービスなんかが有名ですね。
過去はグルーポンやFacebookを模倣したサービスを作り、本家に数十億で買い取ってもらっていました。私はアイデア自体に価値はなく実行することに価値があると考えているのでこの方法自体はアリだと思っています。これはまた別の議論になるのでここで是非は問いません。
重要なのは仮に自分が作ったサービスを模倣したサービスをロケットインターネットのような会社がリリースしてきた際に、どうすればスイッチされないようにできるのでしょうか。また重要なことはそもそもこのサービスはもうスイッチできないと思ってもらう状況はどうすればできるのでしょうか。
自社のコンテンツを競合他社に模倣されたという経験を持っている方もいるでしょう。どうすれば競合が真似をしても、一朝一夕では追いつけない状況にするのかということを話したいと思います。
価格.comの食べログは後発でありながら、ぐるなびなどのネットポータルサービスの雄を抜き去り不動の地位を手にしつつあります。食べログがぐるなびと異なる点を見ることで何が参入障壁を作っているのかを見て行きましょう。ちなみにここでいう参入障壁を作れたという状況としては
・ある程度のコンテンツが増えたことで検索エンジンの評価が高まり
・自然集客が増えることでユーザーに◯◯といえば「◯◯」と認知され
・他社が参入する気にならない、しても撤退する
という状況を想定しています
これを達成するためにはコンテンツを集め、リンクを集め、検索エンジンの評価が高まるという好循環がどれだけ早く回るかどうかが鍵になります。
・ビジネスモデル
・ユーザー投稿コンテンツの量
・リンク量
の3つがポイントだと考えているのでひとつずつ説明をします。
■ビジネスモデル
結論はコンテンツが自然に集まるような事業を行うことです。もしくはそういった機能をウェブサービスに持たせることも必須です。
前々回の記事で紹介しましたが、食べログの事業のミッションはお店選びで失敗したくない人のためのグルメサイトを作る ことです。これを達成するためには、お店選びに必要な情報は仮に飲食店にとっては都合が悪いものでも集めることが必要 になります。
ただぐるなびのミッションは飲食店のサポーターであることです。コンテ ンツが集まることがミッションの達成に直接的につながるわけではありません。
検索エンジンはコンテンツ量が多いサイトを評価するため、検索エンジンの流入で参入障壁を作るのであればコンテンツが増えるような機能設計が大きな鍵になります。またはそれに紐付くビジネスモデルです。
またmixiに代表されるsnsはそれ自体大きなコンテンツを持っていますが、snsという事業は構造的に検索エンジンに評価を受けないという特徴があります。現状はmixiをFacebookが猛追していますが、Facebookは検索エンジンに対してプロフィールページの外側をインデックスさせる工夫をとっています。こういった機能でも流入を増やすことは可能です。
こういったことを行うだけでもアドバンテージを得ることができます。ビジネスモデルというと大げさですが、コンテンツを増やす仕組みと言い換えてもいいかもしれません。
■ユーザー投稿コンテンツを集める
コンテンツボリュームが集まりやすいビジネスモデルであっても、そもそもコンテンツが集まるというのは確約されていま せん。仮に私がCGMコンテンツで一発当てる!と息巻いているアントレプレナーと仮定した場合、どのようにコンテンツを集めるでしょうか?
方法は2つしかなく
・自分で書くか
・書いてもらうか
しかありません。
自分で書くコンテンツというのは記事の質をコントロールできる分、コストがかかるというのが特徴です。一方 多くの方に書いてもらうことでコンテンツの量という部分は自分達で書いているときとは比べられないほど増やすことができます。
書いてもらうためには、お金を払って書いてもらうか書くのが好きな人を集めるという方法が妥当でしょう。食べログが立ち上がった際は、他のグルメポータルを利用していたレビュアーに声をかけて、食べログに来てもらったという経緯があります。
またnaverまとめなんかは後発のCGMでありながら、凄まじい形で拡大しています。あのサービスは投稿した記事の閲覧数に応じて対価が支払われるという仕組みになっています。これはお金を払って書いてもらうという方法ですね。
ある程度のコンテンツが集まれば、あとは自然にコンテンツが増える循環が生まれていきます。初速をどう担保するかが重要になるでしょう。そのためにもレビュアーに直接声をかけたり、対価を払うことでコンテンツを増やすということが必要になります。
以前も紹介しましたが食べログは他のグルメサイトと比較にならないぐらい多くのコンテンツを持つサイトになりました。これは大きな参入障壁になっています。
■リンクを集める
10年前であれば面白い、他人と共有したいと思った情報はハイパーリンクによってシェアされていましたが、今はFacebook のいいねやツイートなどが代替しています。要は昔と比べるとリンクを集めるのが非常に難しくなっているという話です。
自然発生によってリンクを集めるためには、良いコンテンツを作るべきという話があります。非常に真っ当な意見であり何も反対することはありません。ただいわゆるリンクが集まるような良いコンテンツは作るコストがかさむことや、方法を汎用化させにくいというのが大きな問題だと考えています。
シンプルな解決策としては自社で別ドメインのサイトを立ち上げ、それらを別ドメインのリンクリソースとして活用するというのがよいと思います。うまくいけば大きな参入障壁になるでしょう。食べログが強いのは、自然発生的に集まっているコンテンツはもちろんですが自社で保有している別ドメインからのリンクの影響が大きいです。
この考え方でいうと、今後リクルート・楽天・価格.comといった自社で様々なサービスを別ドメイン、サブドメインで展開する企業は今後非常に大きな存在になってくるでしょう。amazonなんかは国毎にドメインを振り分け相互にリンクしています。
このPRというのはページランクの略称です。ページランクはgoogleがページに対して格付けを行った評価結果になります。ドラゴンボールに例えるとスカウターにでてくる戦闘能力です。単位は0から10までの評価で10が最も高いため、PRが8というのはZ戦士の上位層に入るレベルの強さです。ベストは圧倒的なコンテンツに対して自然発生的にリンクが集まり、且つ自社の別ドメインのサイトからリンクをもらっているという状況が理想だと思います。
ただ別のドメインからのリンクをどんなに増やしてもコンテンツ量が不足しているとSEO対策はうまくいきません。参入障壁と呼ぶほどの圧倒的な強さを持つためには両方の要素が必要になります。
食べログや価格.comはこれらの強みを持っているため、後発で同じことをやっても厳しいでしょう。SEO対策もそうですが、「飲食店探し」といえば「食べログ」というユーザー体験が積み重なることでスイッチはしずらくなっていきます。
ここで各ワードのブランド検索数を見てみましょう。
これを見ると指名検索するような最も良いお客さんを一番多く持っているのはどのサイトかがわかると思います。
これまでの話をまとめましょう
・コンテンツが集まるビジネスモデル or コンテンツを後付けで機能として追加する
・ユーザーに投稿をしてもらう、もしくは自社で集める
・自社で外部リンクを調達したうえで、自然発生リンクを集める
これらを達成することが検索エンジン上の参入障壁を作るうえでは重要になってきます。
以上で価格.com研究はひとまずおしまいです。ただどのサイトも非常によくできているので、今後は食べログ以外のサイトを調査するかもしれません。
というわけで次回の更新を楽しみにお待ちください!
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