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2013.08.19 黒須敏行
Googleアナリティクスを見て一喜一憂してるけど改善は何もしてないという人に勧めるデータ解析との付き合い方
今回の記事の目的は
「ビジネスで成果につなげるために、アクセス解析のデータとどうやって付き合うべきか?」
ということを整理することです。
よく営業現場や社内の会話で耳にする会話で営業担当者がクライアントに「アクセス解析を提案します」と伝えたりクライアントが私達に「アクセス解析をやって欲しい」と依頼するというものがあります。
アクセス解析はダイエットを目的とするときの体重計測みたいなものでそれ自体にそこまで価値はありません。むしろ計測の結果から長く続けられる運動メニューを考えたり栄養バランスのとれたレシピを考えて実行することが大事です。
まあなかには毎日計測して数字を見れば結果的に痩せられるぞという本もありましたけどね(汗)
データを見ることもそれはそれで重要ですが、それ自体が目的になっているケースが散見されることや、そもそもデータを見ることでほんとに価値のある課題が発見できるケースってどれくらいあるの?という疑問を持っています。
今回の記事はデータだけで仮説発見できるケースとそうではないケースを整理し、そうではないケースではどういった考え方を持ってデータと付き合えば良いのかを理解してもらいたいと考えています。
そうすることで
・仮説発見のスピードが早くなる
・筋の良い仮説を発見できるようになる
ということができるようになってもらうことが狙いです。
結論は
・大量のデータから仮説を発見して改善することは条件付きでできる
・一方データから仮説を発見するの難しい業界もある
・そういった業界はユーザヒアリングやユーザ観察から手に入れたほうが改善スピードは早くなる
になります。
進め方としては
・データ中心課題発見プロセスの事例と問題点
・行動観察課題発見プロセスの事例と問題点
・あなたにあったオススメの課題発見方法
という形で解説をします。
それでは参りましょう!
■大量のデータを読み解くことで、インパクトをもたらす仮説発見ができた事例
大量のデータから、これまでの常識を覆すような仮説を発見できた事例で最もわかりやすいものはアメリカメジャーリーグのオークランド・アスレチックスが採用したことで有名にもなったセイバーメトリクスでしょう。
メジャーリーグというのは少し前まではかなりテキトーなやり方で選手の起用やチーム戦術を決めていました。
例えば「彼女が不細工な選手は自己評価が低いから成功はしない」という凄まじい理由で、才能のある選手にも関わらずスカウトしないみたいなことはスカウトの間で当然の話として流布されており、それに誰も何の疑問を持たないという空気がありました。
当然勝利に貢献するはずの選手が不当に低く評価されていることや、見た目は派手だけど全く成功しないというケースも出てきます。野球というスポーツは、サッカーやラグビーのように継ぎ目の無い競技と比べて、一つ一つのプレーが都度リセットされるために統計をとりやすいという特徴があります。そんななかアメリカの野球好きのオタクが大量の選手の統計データをもとに
・派手はホームランを打つことよりもほんとに勝利に貢献しているプレーは何なのか?
・不当に低く評価されている選手は?
・反対に過大評価されている選手は誰か?
などの勝利につながる仮説発見を次々と発表したのがセイバーメトリクスでした。
例えば打率よりも出塁率を重視するという考え方が有名です。野球というスポーツは通常はピッチャーが投げた球をバッターが打つことで点数を稼いでいくゲームですが、野球のルールが面白い点は必ずしも球を打たなくても点が入るというルールがあるところです。
ピッチャーは本来投げるべきゾーンを外れたボールを投げすぎると、ピッチャーに対するペナルティとしてバッターはヒットを打たなくても塁に出れます。これが四球とかフォアボールというやつです。バットを振らずに塁に出るのはホームランやヒットを期待する観客にとっても面白いものではありませんが、データを見ればヒットを打っても、フォアボールを選んでも出塁をしたという数字は変わりません。
・3割バッターで見た目もイケメン
・2割5分しか打たないけども、四球の数がとにかく多い。理由は身長が物凄く小さいから!
みたいな選手が並ぶと当然前者の選手の年俸は高いですが、後者は人気がありません。まあバットを振らずにひたすらボールを見続ける選手は地味ですからね。
アスレチックスはデータから見た際のコストパフォーマンスは後者のような選手であると考え、勝利に貢献するが市場の評価は低いという選手をスカウトして獲得し、金萬球団ヤンキースの総人件費の3分の1の予算で勝ちまくったのです。(実際構造的に四球が多くなるような体格の選手を彼らは獲得していました)
このあたりの話はマネーボールという本に詳しく書かれています。
またソーシャルゲームなどの業界も基本はデータを見て仮説を作って改善をさせていくのが基本です。
gloopsが語る、1日2億PVソーシャルゲームのデータ分析
これはグループスグループのアナリティクストの方のインタビューですが、これを見ると数字から仮説を発見し改善するプロセスを踏んでいることがわかります。
ソーシャルゲームだけではなく通販ビジネスなどもそうですが、ビジネスモデル研究が成熟している業界は業界平均の数字がデータとして溜まりつつあるため業界平均値や自社の他商品と比べて異常値が発見しやすいという特徴があります。
データを見ることで、インパクトのある仮説が発見できるのは理想ですが、こういった方法に問題が無いこともありません。
先日やまもといちろうさんがこんな記事を書いていました。
ローソンのデータ解析発見についてインパクトのある仮説を発見できなかったのではないか?と評価しています。
こういった解析は数字を見た上で、データを解釈し筋の良い仮説を発見するセンスが必要になりますし、何より時間がかかります。そういったことができることに越したことはありませんが現実問題難しいでしょう。そのため全ての事業者にオススメできる方法では無いなと思います。
そしてこういった方法以外にもインパクトのある仮説を見つける方法はあります。それを紹介しましょう。
■twitterなどの有名ウェブサービスはユーザを見ることで仮説発見を行った
facebook、twitterのユーザ獲得担当者だったandy johnsさんがどのようにユーザ獲得をしていたのかを紹介している記事が興味深いです。
この記事ではtwtitterのコンバージョン改善の方法が紹介されています。
・ユーザーの伸び率が鈍化
・懸命にアクセス解析とそれに基づく改善を実行
・しかしあまりうまくいかず
・徹底的にユーザー視点で”使いにくい”ポイントを調査
・新規アカウント登録画面に原因があるのでは?と仮定
・氏名入力と同時に利用可能なアカウント名候補が現れるよう設定
上記を実行した結果、なんと1日あたり6万ユーザーもの新規獲得増加という成果をあげたのだとか。http://www.find-job.net/startup/event_growth0726
twitterは当初アクセス解析に基づく改善をしていたところうまくいかず、ユーザ観察をもとにして発見した仮説を改善したところコンバージョンを大きく改善できたという事例です。
また以前紹介した自動販売機の売上を伸ばした方法もユーザ観察をもとにした仮説発見方法です。
こういった方法はサービスの改善はもちろんですが、新しい事業の芽になることも少なくない有効な方法です。
リクルートでじゃらんやフロム・エー、ゼクシーなどの媒体を20年間で14誌立ち上げたくらたまなぶさんという伝説の編集者がいますが、どのように事業を立ち上げのかが『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』という本で紹介されています。
くらたさんは新規ビジネスにおける仮説発見の調査方法を
・市場調査・・・『人の行動』を数字で知ること
・マーケティング調査・・・『明日からの人の気持』を言葉で知ること
の2つに分けることができると定義しており、市場調査の仮説を確かめるためにユーザインタビューを行う、もしくはユーザインタビューで得た仮説を市場調査で検証するという方法をとることで事業のタネを集めていったということが描かれています。
要は
・数字で発見した仮説をユーザを見て検証する
・ユーザを見て発見した仮説を数字で検証した
ということです。
昨今のデータ分析にまつわる話はどれもデータを見れば答えがあるという風潮を強く感じますが、ビジネスにインパクトのある仮説をデータだけで発見できるものかいな?というのは様々な案件を見ていて感じます。
ほんのちょっとだけでもユーザの不安を特定するプロセスを挟むだけでも、データ分析で得られた仮説は何倍にも良い物になります。
■あなたにあった最適な仮説の発見方法
通販ビジネスやソーシャルゲームなどのビジネスモデル研究が成熟している業界は比較参考になるデータが多いため、データをもとに仮説発見がしやすいです。
また凄まじい数と多種多様のユーザ像がターゲットとなるような大規模なインターネットサービスはそもそもユーザを見ろといっても、誰を見ればいいんだ!?となるためデータを見て仮説を立てていくしか方法が無いというケースもあります。
facebookやtwitterのユーザ獲得担当だったandyさんはevernoteのユーザ獲得方法プロセスを紹介していますが、こういった方法が参考になるでしょう。
ユーザー獲得チームで色々な仮説やテストを行なっているのだけど、賢い人達をひとつの部屋に集める。そこからブレストして施策を200-300ほど仮説(テスト)を出す。その中から短期間に効果を発揮しそうな施策を選び、その後エンジニア・デザイナーが実装に時間がかからなさそうな施策を選択する。http://blog.takejune.com/archives/52288735.html
ただし、その「数値計測の可否」は限りなく幅を広くとって、色んな数値をトラッキングできるように体制と作ってからが望ましいです。そしてできるだけたくさん試す事。テストした仮説検証はそのほとんどが失敗しますから。Quoraの場合2ヶ月で70もの施策を試したがそこそこ良い結果を出したもので15。とても良い結果を出したものが3。残りの52は全部失敗だったんです。http://www.find-job.net/startup/event_growth0726
ターゲットが不特定多数の大規模なサービスは
・データを見て
・アイデアを考え
・とにかく試す
というスタンスが重要でしょう。
ただしそういったことが難しい業界もあります。
・結婚、仕事選び、お家選びなどの人生に一度の大きなイベントに携わるような業界
・市場が導入期のため、商品に対する情報が少なくユーザ不安が大きいような業界
などの業界は商品にもよりますが、データを見るよりもユーザ不安を特定して解消する特定して解消することが最適な改善手法です。
こういった業界は
・データを見ても検証足りえる数字にならない
・ユーザ不安を解消するという発想がそもそも無いため、んの少しの改善で大きなインパクトを生む
という状況がよくあるからです。
そのためまずはデータから課題を発見しようという発想ももちろんアリですが、自分のビジネスモデルにその方法が合ってるかををちょっとでも考えるだけで仮説発見のスピードは今よりもっと早くなるはずです。
自分の商品の購入を検討するお客さんを思い浮かべたときに、商品や業界に対する不安や不満が大きそうだなとということであればまずはユーザ不安を特定することをオススメします。
方法はユーザテストでも、ヒアリングでもインタビューでもなんでも構いません。時間がなければ2ちゃんねるみたいな匿名掲示板を見てもいいですし、Yahoo知恵袋の投稿を眺めてもいいでしょう。そうすることでデータをみてもわからなかったような課題発見の仮説を得ることができます。
大量のデータからセイバーメトリクスのようなインパクトを生む仮説発見ができればたしかに理想ですが、現実的にはオススメしません。アクセス解析の数字は異常値を発見するために使うぐらいのスタンスが望ましいでしょう。
それではまたこの場所でお会いしましょう!
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