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2014.12.08 黒須敏行
「こんなに成長している理由がわからない」と社長が語る急成長スタートアップ『くらしのマーケット』の細かすぎて伝わらないSEO戦略
アメリカにtaskrabbitというスタートアップがあります。
近所にいる時間が空いてる人に対して、家具の組立や、ちょっと重いものを運んでもらうといった軽作業を依頼できるサービスです。airbnbがわかりやすいですがこういった無形サービスを個人間で取引できるサービスは成長分野の一つです。
日本だとくらしのマーケットやエニタイムズが同じようなコンセプトのサービスなんですがエニタイムズは個人間同士の取引がメインで個人対法人の取引支援は一部です。くらしのマーケットは法人と個人のプラットフォームがメインなのでビジネスモデルが若干異なります。
くらしのマーケットの手数料は最低2000円で、基本は決済の20%です。トラベルなどは8%や10%が相場ですが、不用品回収やハウスクリーニングは単価が低いのと事業者サイドの粗利率が高いため20%でも成立しそうです。
くらしのマーケットは外からウェブマーケティングの方法を見るとかなりうまくいっているだろうなと思っていたんですが最近こんな記事を見ました。
(インタビュアー)売上げなどの数字も成長してるとか
(くらしのマーケット浜野社長)少し前に成長について検証していたのですが、2013年1月頃までは状況はそこまでよくありませんでした。けれど、そこから約1年で流通総額にして100倍とか、そういう成長をしました。さらにここ2カ月はさらに伸びて、初期の頃から比較すると、260倍とかそういう数字になってます。
(インタビュアー)要因は?
(くらしのマーケット浜野社長)よくわからないんですよね…。
外から見るとくらしのマーケットはSEOがかなり良く出来ており、検索エンジンをフル活用したビジネスモデルの王道を行っている印象を受けます。一方エニタイムズは広告がメインの集客になっており、これが成長の足かせになるだろうなと感じています。
今回の記事の目的は両サービスを比較することでユーザと事業者をつなぐようなマッチングサービスにおける検索エンジン集客成功のポイントを理解してもらうことです。
ひとつずつ説明しましょう。
|リボン型ビジネスモデルのSEOを成功させるために大事なこと
ユーザとサービス提供者をつなぐプラットフォームを作り、決済手数料や広告掲載費用などでビジネスを成立させるモデルをリボン型ビジネスモデルといいます。リクルートのビジネスモデルは基本はこのパターンです。
この記事が勉強になると思います。
「食ベログ」vs「ぐるなび」~リボン型ビジネスモデルから学ぶ 時価総額1000億円の事業機会の見つけ方
このビジネスモデルのSEOの成否を決めるポイントがいくつかありますが、ひとつにどうやって低コストにオリジナルの情報を集めるか?という観点があります。
サービス提供者はひとつのプラットフォームに対して情報を提供するわけではありません。飲食店であれば同じ情報をホットペッパーとぐるなびに掲載するという状況が想定できます。
検索エンジンはオリジナル情報を持っているサービスを評価しますが、構造的に情報が競合他社のプラットフォームサービスと似通ってくるため何らかの方法でオリジナル情報を保有する必要があります。
またコンテンツ調達コストを低コスト化する仕組みを持てるかもポイントになります。
くらしのマーケットがどのように解決しているかを比較してみましょう。
|三方コンテンツを調達するくらしのマーケット
くらしのマーケットは自社媒体のコンテンツ、ユーザ投稿のコンテンツ、掲載事業者からのコンテンツを用意しています。
一方エニタイムズは自社媒体のコンテンツ、ユーザ投稿のコンテンツは持っていますが、掲載事業者やユーザサイドからのコンテンツは弱いです。
掲載事業者から発信するのコンテンツは厳密にいうとあるんですが、継続的に積み上がっていく構造になっていません。
こういった設計にしておくと、後々低コストにオリジナルの情報を継続的に増やすことができ、このような初期の工夫が後々ボディブローのように効いてくるのがSEOです。
この設計はHOME’Sがよくできています。
ユーザ投稿、事業者投稿、ポータル発信それぞれがバランス良く構成されています。
不動産業界でトップクラスのSEO集客があるHOME’SのSEOを徹底研究
|ユーザ関心の高いキーワードを特定してコンテンツを用意するくらしのマーケット
くらしのマーケットが良い点は、不用品回収やハウスクリーニングサービスを調べるユーザの関心の高いキーワードを特定し、それに応えるコンテンツを用意していることです。
例えば不用品回収サービスを探すユーザは家の近くで探すため「地域 不用品回収」「地域 ハウスクリーニング」などの検索ワードで調べます。
また「目黒 ブラウン管テレビ32型処分」「川崎 ダブルベッド 引取」といった重くて持てない家具と地域を絡めて調べることが多いです。
コンテンツの有無を比較するとこのような形になってます。
こういった構造の違いから検索順位のパフォーマンスはくらしのマーケットが圧倒しています。
また不用品回収だけでなく他のキーワードも同じような結果になっています。
エニタイムズはこういったキーワードは検索連動型の広告を出しています。
不用品回収や家事代行系の検索連動型広告費用はスマートフォンユーザの急増によって近年急激に高騰しています。
スマートフォンは画面サイズが小さいので枠が少なく単価が高騰しやすいんですよね。
くらしのマーケットもある程度の規模になればアドワーズ、クリック課金広告は湯水のように投下すると思いますが、現状は根雪のように集客効果が積み上がっていく構造になっています。
|なぜこのような違いが生まれるのか?
あくまでも仮説ですがエニタイムズはSEOを広告の一つと捉えてるんじゃないかなと思ってます。
一方くらしのマーケットの方は金をかけずにお客さんを集めよう!と考えてSEOに辿り着いたのかなと。
エニタイムズのチームはサイバーエージェントという広告が強い会社出身の人達なので、とりあえず金を使ってなんとかするという考え方が根底にあると思うんですよね。一方くらしのマーケットの浜野さんは学生ベンチャー出身なのでゲリラ的にマーケティングをする発想力が強いと思います。
SEOをマーケティングではなく広告の一つとして考えてしまうと、いくらかけたら何人増えるという発想から話が進まず
システム回収の費用対効果が算出できず、優先度が低くなる
↓
仮に検討しても外部リンクにいくら投資したら、どれくらい順位があがるというシミュレーションという話になりがち
↓
そうなるとロングテールキーワードは集客効果の算出が極めて困難なので必然的にビッグワード集客に関心が向かう
↓
ビッグワードはロングテールコンテンツの積み上がりが無いと成果が出ず積んでしまう
みたいなことが起こりがちです。
ウェブマーケティングの重要性に理解があるマーケターや経営者はとりあえず成果がでるかわからならいからやってみるというのが基本スタンスですし、改善体制を社内でもっていることが多いです。
資本力のある大手企業は広告発想になるので、システム回収を含めた費用対効果を算出しにくい施策を採用しにくいのに対しスタートアップはゲリラ的に素早い改善を社内で回してまくっていくというシーンをよく見ます。
ウェブサービスをやるんだったら、自社で改善体制を持つこととお金をかけずにできることは無いかという視点が大事でしょう。
あとくらしのマーケットが成長しているポイントで一番大事なのは競合が少ないことです。このマーケットのプレイヤーは人材や不動産と比べるとかなり限られるのでマーケティングをきちんとやることで成長していきます。
今回紹介した施策はもちろんリソースがあればやったほうがいいですが、競合状況によってはそこまで大きな効果が見込めないことも多々ありますから要注意です。
それではこの場所でまたお会いしましょう!
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